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スウェーデンは現在、日本と同じように国家的に財政危機に陥っています。現在の国民負担率は70%を超えているのです。年収の7割が税金として消えてしまいます。
スウェーデンの消費税は大体20%くらいで日用品や食品が12%ほど、アルコールやタバコに関しては70%にもなるほど高額です。そのため、スウェーデン政府は日本と同じように医療費削減を進めています。いろいろなところでの人員削減や大胆にも病院の数を減らすなどしています。
スウェーデンでは大部分が公的な医療機関しかなく、私立の医療機関はほとんどありません。 医療費も州からまかなわれています。たとえば、処方薬に関して、1800クローネ(日本円で役36000円)までは自己負担になりますが、それ以上は国で負担してくれます。 このようなことから福祉が充実し「高福祉国家」と呼ばれるようになったようです。
しかし、そのことが国の財政を圧迫し、税金が高くなり結果的に負担率が上がり、負担も大きなものになっているのです。事実、スウェーデンの人達はほとんど貯金をしていないそうです。 それで将来、不安ではないのかというと、「国が面倒見てくれるから」とのことでした。 完全に人任せになってしまっています。このあたりはアメリカとはまったく違う点で、アメリカは自己責任を重視する国ですので、保険は民間医療保険や企業年金が発達しています。その為、社会保障制度が果たす役割は小さくなっています。スウェーデンはほぼ逆ですが、日本はスウェーデンに近い状態になっています。
日本の国民負担率が30%程度のようですが、これもどれくらいでスウェーデン並みになってしまうか今の状態では分かりません。
医療が公営のサービスになっているため、市場的に独占状態(monopory)にあります。独占状態ですので競争も生まれません。これがとても問題で、サービスが悪く、向上を図ろうともしません。しかし、競争が生まれることになったのです。他のEU諸国や企業からの圧力、グローバル化の波が来ているのです。この話は後に回します。

アメリカや他の欧州諸国と同じように、薬剤師の地位は高いようです。
薬剤師だからすばらしい人間ではなく、人間としてすばらしい人が薬剤師になるという印象です。スウェーデンの薬科大は3校しかなく、卒業後の進路はほとんどの薬剤師が製薬企業にいってしまいます。これは単に、給料がいいからという理由からです。薬科大では3年のコースと5年のコースがあります。3年コースは調剤薬局でしか働けず、5年コースになると病院でも働けるようになります。6年制がとられている国はアメリカと日本だけです。
スウェーデンでは医薬分業がしっかり確立されており、リフィール処方箋、代替調剤、テクニシャン制度の3つがきちんと採られています。テクニシャンについて資格はありませんが、高校で進路希望をだせば、テクニシャンの勉強をさせてくれるそうです。この点はアメリカや、オーストラリア、シンガポールなどに比べて遅れていますが、日本よりは進んでいます。
そして、スウェーデンの医療はほとんどが公営と前に述べましたが、全国の薬局が1つの会社組織になっており、国が全株式を保有しています。
そのため、スウェーデンの薬剤師は少し公務員的で、あまりClinicalな部分を重視していません。患者思考などの考え方は少なく、服薬指導に関しては冷ややかな感じさえ受けました。今回、2箇所の薬局を見学させていただきましたが、より顕著だったのは病院の薬局で、ショッピングセンター内の薬局は少しずつですが、「患者さんのために」という考え方が普及しているようです。

今回、市内のショッピングセンター内にある店舗と、病院内にある薬局を見学させていただきました。どちらも会社としては同じで、組織が違うそうです。
まずはじめにショッピングセンター内の店舗ですが、かなりきれいな外観で、中原先生が
「アメリカの薬局はすごく乱雑。ここはかなりきれい。シンガポールはもっときれいだった。しかし、始業時間前に向かいいれてくれた国は初めてだ。」
とおっしゃっていました。案内をしていただいた薬剤師のピーターさんは丁寧にいろいろな質問に答えていただき、写真もどこを撮ってもかまわないと、とても優しい方でした。
薬剤師は6人で、テクニシャンが4人、キャッシャーが1人で運営されています。 店舗内はOTC(スイッチ)が多く、アレルギーの薬や、NSAIDs、オメプラゾールなどが置いてあり、成分量も何種類かありました。スウェーデンでは配合剤のOTCはほとんどなく、風邪のときもNSAIDsなどで頭痛を抑えたりするようです。

日本のOTCに対する意識はかなり低いのですが、ヨーロッパではセルフメディケーションという考え方が一般的で(これは自己責任の意味ではないようです。)、スウェーデンの人たちもよくOTCをかっていくようです。OTCの飲みすぎの記事が新聞に出たくらいです。実際、見学中に開店した後、患者さんが入ってこられてすぐにOTCの棚を見回していました。 調剤の流れですが、受付後に二つのラインがあり、時間のかかるラインと時間のかからないラインがあるそうです。目安は4分ほどとの事でした。
調剤に関してはテクニシャンが調剤をして、薬剤師が監査をし、テクニシャンが投薬をします。何か聞きたいときは薬剤師とこのあたりは日本より進んでいるようです。テクニシャンに関する資格などがないあたり、アメリカよりは遅れている印象を受けました。 リフィール処方箋が全体の70%くらいで、処方箋形式は手書きとパソコンから打ち出される電子式がありました。どちらも基本的に代替調剤可で、代替不可のときだけ手書きはサインが、電子のときは処方薬の書いてあるところに“不可”と記載されてきます。

面白かったのが、薬品棚で、円形の棚があり、処方入力すると棚が回転するそうです。これはアメリカにもなかったと中原先生がおっしゃっていました。 スウェーデンも1種類ごとに瓶に入れられるアメリカ形式です。
ちなみに在庫の何割程度が先発品なのか尋ねたのですが、あまり在庫などを気にかけていないらしく、「良い質問だ!」とごまかされてしまいました。月の処方箋枚数などもあまり気にしていないそうです。
あちらではまだ患者思考などの考え方が浸透していないようですが、ピーターさんはなぜ薬剤師になったのかと言う質問に「患者さんの病気を未然に防ぐ事が、医療費を削減し、国の財政難を救う事につながっていくから。」というようなことをおっしゃっていたのが印象的でした。興味深かったのが、薬歴なく服薬指導加算ももちろんありませんが、患者さんを話をして15分くらいならなにもしないのが、30分以上はなしたときは話した内容を紙に書き、患者さんへ渡すそうです。

次に病院内の薬局を訪ねました。こちらはさすがに病院内という事で、患者さんの映りこむようなところでの写真撮影はできませんでした。
今回見学させていただいた病院はカロリンスカ大学病院で1600床のベッドがあり従業員数は1500人。2100人の研究者がいて、患者数は年間140万人になるそうです。病院内には薬局が3つあって100人の従業員がいます。病院内を少し見せていただいたのですが、日本の病院とは違い、まるでショッピングセンター内のように、売店やカフェ、美容室までありました。
薬局内は患者さんもいるのでほとんど見学できず、担当の薬剤師さんから講義のような形式で仕事などを説明していただきました。スウェーデンは約100ヶ所の病院薬局があり、そのうち7つの大学病院にも薬局があります。ここは医薬品の情報をやっているそうです。病院の処方箋はオーダーリングシステムを採用していて、手書きの処方箋はないそうです。一つの会社が病院薬局を独占しています。これもApoteketです。しかし2008年6月には独占がなくなり、他社も参入できるようになります。そして、今までは薬局の責任者は薬剤師でなくてもよかったのですが、これからは薬剤師でなくてはいけなくなるようです。
教育制度は大学卒業後、3年間ヘルスケアに関する勉強をするのと、卒業後1年間のクリニカルファーマシーの勉強をするそうです。 基本的にはやはり薬の調整と疑義照会が主な仕事のようで、患者さんへの服薬指導などにはあまり力をいれていないようでした。その業務も経済的に人件費が不足していることを背景に行き詰まり、新しいことをやらなければいけないというあせりみたいなものからクリニカルファーマシーを始めようとしているようですが、これはアメリカすでに30年前に取り組み今では必要ないこととされているものです。
クリニカルファーマシーの内容は静脈注射に詳しい薬剤師を育てること、薬の安全な取り扱いや使い方、薬物動態などどちらかといえば、日本でも「何をいまさら」というような内容でした。 今、病院薬剤師は全体で患者さんの安全を守ろうとがんばっているといっていました。

今、スウェーデンの医療業界は独占から市場開放へと向かっています。
それは財政難による自己負担の増大と他の欧州諸国からの圧力が原因です。来年の一月には薬関係の競争が始まります。今まではApoteket以外の薬局はありませんでしたが、これからは他の会社ができ、これまでのようなサービスではやっていけなくなるでしょう。
ヨーロッパでは他の国で作られた薬を使う事ができますし、そのほかにもドイツの処方箋をオランダに持っていって調剤してもらったりできます。 日本とスウェーデンは自国内で自国向けに作られた薬しか使なく、他国へ処方箋も持ち込んでも調剤してもらえません。日本はそれでもあまり問題ありませんが、スウェーデンはそうは行かず、これから他国の製品も使えるようになっていきます。そんななかでサービスの向上、価格競争などに立ち向かっていかなければならなくなっています。
「ヨーロッパ」の「高福祉国家」の薬剤師がどれだけすごいのかと期待して行った今回の研修旅行でしたが、ショッピングセンター内の薬局のピーターさんのような薬剤師もいましたが、日本の一部の薬剤師が患者思考を目指している点においては現状のスウェーデンの薬剤師より一歩進んでいる感がありました。
日本の医薬分業はまだ完成されておらず、代替調剤も始まったばかり、リフィール処方箋は分割調剤として一部の条件つきでしか認められず、テクニシャンにおいては薬剤師自体が認めようとしていません。すでにヨーロッパやアメリカでは医薬分業は完成されている感があります。日本はどちらの国からも学ぶ事ができるのですから、両方のいいところをとりいれ、日本独自の医薬分業のスタイルを確立していけるのではないかと思っています。