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正式名所:グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
または、グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国

イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドから構成される立憲君主制国家。現在の女王、エリザベス2世が君主。国民にとって女王とは国家代表であるだけでなく、国家の統一と平和を象徴する存在のようです。エリザベス女王の正式名称は、「神の恩寵により、グレート・ブリテンと北アイルランドおよびその他の領域と諸領土の女王、英国連邦の首長、信仰の保護者たるエリザベス2世」とされています。

  • 首都:ロンドン 人口:約6180万人(2010年現在)
  • 公用語:英語 面積:約24万4820k㎡
  • 民族構成:イングランド人83%、スコットランド人8%、ウェールズ人5%、
      アイルランド人3%。ほかにアフリカ、インド、カリブ海諸国など旧植民地や中国
      からの移民も多いようです

イギリスの医療は、主にNHS(National Health Service)という国営の国民保険サービスによってなりたっています。民間の医療も存在しますが、人口の1割が利用している程度のようです。
NHSは、支払能力にかかわらず、医療を必要とするすべての人に公平な医療サービスを提供することを目的として、「ゆりかごから墓場まで」をモットーに究極の社会保障を目指し、1948年に設立されました。このNHSは、主に国民の税金と国民保険で運用されているため、英国は世界でも稀にみる医療費全額無料の国でした。しかし、数年後、国家財政難がきっかけとなり、処方薬が有料になったのですが、実際は今でも、大半の人が支払い免除になっているようです。
NHSは、イギリスに住む人には、誰でも無料で医療サービスを受けられるという理想的な制度ともいえます。しかし、現実は、家庭医(General Practitioner:GP)と呼ばれるNHSの医師に診てもらうために予約を入れても、予約が取れたのは数日後で、受診時には症状がなくなっていたことや、手術をしてもらうための待機リストなどもあり、年単位で待たなくてはならないこともあるようです。医師不足とも言われているようですが、競争があまりない社会の為、GPには自由な時間がけっこうあるようでした。GPは、権力のある職種のためこのようなことになっているのだと思います。
そして薬局についてですが、日本と英国では大きな違いがあります。医療の成り立ちが違うので、薬局の在り方にも違いが出るのが、当然なのかもしれません。英国には、日本でいう門前薬局は存在しません。それに変わるものとして、コミュニティー薬局があるのです。コミュニティー薬局とは、日本でいう調剤併設型のドラッグストアをイメージしていただけると分かりやすいと思います。その理由として、英国では薬局にOTCを置かなくてはいけない決まりがあること(エッセンシャル(必須))、病院を受診してもその日のうちに診察されないため、薬局としての経営がなりたたないこと等が考えられます。その為、イギリス人は軽症のものは市販薬で対応することが多いようです。

現在、英国では、4万5000人の薬剤師が登録されています。その7割はコミュニティー薬局(ドラッグストア)、2割は病院の薬局に勤務します。コミュニティー薬局は、大手や個人などの経営の違いはありますが、いずれも民営です。英国の病院は、国営(NHS)が主なため、病院薬剤師は国家公務員になります。

4年間の薬科大学の修士学位取得後、1年間の仮登録研修(プレレジ)期間を経て、英国薬学総評議会が施行している薬剤師資格試験に合格し、登録されると、晴れて薬剤師になることができます。プレレジの選抜試験は、早い所では3年生初期から始まり、その選抜試験は薬剤師資格試験よりも難易度が高いため、英国の薬学生は、3年生半ばで資格試験にほぼ合格できるほどの知識を身に付けているようです。これは、英国の大学には、日本のような一般教養がなく、1年生から専門課程に入るため、このようなことが出来るのです。

1841年に英国王立薬学協会が、「医薬品を通じて社会に奉仕」、「薬剤師への教育の導入」、「薬剤師の利権保護」を目的として発足しました。しかし、不祥事が相次ぎ、様々な医療従事者の責任所存が問われ、「規制機関」と「職業団体」が独立した機関へと分かれることになったのです。その後、規制機関としては「英国薬学総評議会」が発足し、職業団体として、「英国」という名が除かれた「王立薬学協会」が再発足したのです。

今回、薬学博物館では、イギリスの歴史を学ぶことが出来ました。
錠剤や坐剤を作る昔の道具などが展示されていて、昔の薬剤師の仕事の様子を見ることが出来ました。

その後、上の階に上がり王立薬学協会の方のお話を伺うことが出来ました。
そして、主におふたりの方が、私たちのために講演をしてくれました。

1人目は、Director for England の Howard Duff さんが、
「英国のヘルスケアの中で、薬局がどのような位置・役割を占めているのか。
Ruth Wakeman さんが、「提案されている、今後の英国における薬局業務の変更について」でした。
Howard Duffさんは、イングランドとコミュニティー薬局の話がメインで、主にコミュニティー薬局のサービスである「エッセンシャル(必須)」、「アドバンスド(高度)」、「エンハンスド(付加)」について、Ruth Wakemanさんは、主にアドバンスドサービスの1つであるMUR(医薬品使用見直し)と、この10月から始まったNMS(新処方常用薬サービス)について講演してくれました。

3つのサービスについて

1.エッセンシャル(必須)サービス

これは必ずやらなくてはならないサービスです。
調剤、リピート処方箋(後述)の管理、OTCの販売などが含まれます。ほかには適切な病院を紹介することや、年に6回の禁煙・紫外線防止などのキャンペーンを自社企画で行うという事も義務づけられています。またイギリスでは調剤薬・OTCに関わらず、薬を一般ゴミとして捨てることは危険防止の点から奨励されておらず、余った薬の回収も義務の一つです。実際回収されたお薬の1年間の総額は500ミリオンポンド(日本円にして約665億円)に昇そうです。インスリン患者さんの使用済み針の回収も行っています。

2.アドバンスド(高度)サービス

簡単にいうと、認定薬剤師によるカウンセリングです。
前述したMURが一般的ですが、その他に医療装具使用見直しや、ストマケアサービスなども行われるようになりました。 これを行える認定薬剤師になるには、マンチェスタ大学の無料オンラインで学びます。比較的簡単にとれるようです。
しかし、薬剤師の育成が追いつかない事、個人情報に対しシビアである国民性の為にプライバシーを守ることが難しく、患者さんに受け入れられにくい事、またプライバシーを守る為に設置されるコンサルティングルーム設置に日本円にして100万円くらいかかること、コンサルティング料として20〜30分/回で30ポンド(日本円にして約3900円程度)かかるが、それを全て国が負担することなど、多々問題があるようです。

3.エンハンスド(付加)サービス

これは、地域ごとに違うサービスのため、明確な規定はありません。
例をあげると…

  • ・緊急避妊薬の提供
    家庭医にいっていると間に合わないため薬剤師による処方が認められています
    (プロトコールという、診察基準にのっとって診断する)
  • ・薬剤師による血圧測定や、血液検査の実施
  • ・予防接種
    イギリスでは以前子供がワクチンを受けて言語障害がでたという事例があって以降、接種することに抵抗があるためあまり人数は多くないようです。ちなみに家庭医で受けると国の負担でタダになりますが、混んでいるため有料でも薬局で受ける方が多いようです。
  •   •妊娠判定
    家庭医では、妊娠3ヶ月以降にならないと診察してくれないため、薬剤師による早期の判定が認められています。
  •   •麻薬中毒者が多いため、治療薬の管理
  •   •クラミジア、ピロリ菌の検査
  •   •抗生剤の緊急のお渡し
  • 家庭医では診察までに3日くらい待たされるため、日ごろ患者さんはOTCを利用しますが、緊急で必要になった場合、看護師によるメモ程度の処方せんに基づいて投薬します。

MUR(医薬品使用見直し)とNMS(新処方常用薬サービス)について

MURとは、2005年から開始された日本で言う薬学管理に相当する業務です。
一歩進んだ服薬指導・薬剤管理・生活習慣管理を総合したものと捉えるとイメージしやすいと思います。不必要と思われる患者さんにはせず、必要な患者さんのみに十分な時間(平均20~30分)を割いて行っているようです。患者さんによって服薬指導・薬剤管理を行っていないというわけではなく、基本的な服薬指導を投薬時に必ず行った上で、より踏み込んだ服薬指導などが必要な患者さんのみに行っているのです。リピート処方(最長1年まで)が発達している英国では、無駄な医療費抑制や、より患者さんに適切で効果的な薬の使い方のために、主に慢性疾患の患者さん(4種以上の薬を服用している65歳以上の高齢者などが優先)を対象に行っています。
NMSとは、今年の10月から始まったアドバンスドサービスの1つです。まだ始まったばかりなので手探り状態のような印象を受けましたが、新しい薬が処方された特定慢性疾患(喘息、COPD,2型糖尿病、高血圧、抗血小板・抗凝固薬が必要な疾患)患者さんへのMURのようなイメージです。英国では、慢性疾患患者の3~5割が、指示通りに薬を服用していない調査結果が出たため、患者さんの薬の不適切な使用とそれに伴う病状悪化を抑制し医療費抑制につなげようと考えたのです。これをきっかけに、いち早くリピート処方箋に切り替えることが期待され、コニュニティー薬局主導による慢性疾患患者の管理を推進していくようです。これらのことから、コミュニティー薬局薬剤師の調剤業務離れがますます進んでいくように考えられています。

Boots薬局は、英国最大手のコミュニティー薬局(日本で言うドラッグストア)です。ヨーロッパ全土にて展開していますが、イギリス国内の特にロンドンではその市場をほぼ独占していると言われています。日本にも一度進出しましたが、大失敗をし撤退しています。(これは個人的な見解ですが、Boots薬局は自社ブランドが大半のため、日本で有名なOTCや、商品を安く売っている日本のドラックストアと比較しときに、いくら安くても聞いた事のない名前の商品ばかりのお店では、日本人には受け入れられにくかったのではないかなと思います。)しかし、今後再び、日本を中心としたアジアへ今度は問屋として進出しようと考えているとの事でしたが、国によって法が違うため展開しにくいということもあり、難しいのではないかという中原先生のご意見もありました。
またBoots薬局は、プレレジ(仮登録薬剤師)の訓練プログラムに定評があり学生からも一番人気のある薬局ということで、プレレジを通し若い優秀な学生を確保し、次世代の育成にこの頃から力をいれているとのことでした。
またBoots薬局は、プレレジ(仮登録薬剤師)の訓練プログラムに定評があり学生からも一番人気のある薬局ということで、プレレジを通し若い優秀な学生を確保し、次世代の育成にこの頃から力をいれているとのことでした。

私たちが視察に訪れた場所はロンドンの中心地にある本店ですが、地下1階から3階建てのとても大きな薬局でした。
そのうち2階を除く全てのフロアでは、食料品や化粧品などのお薬と関係のないものを売っていたのですが、2階のOTC・調剤薬局ブースが日本円で換算すると約2,600万円/週を売り上げ、一番売り上げの高いブースとのことでした。その中でも特に売り上げが高いのは処方薬を扱う調剤ブースとのことです。

何故そんなに売り上げが高いのかということですが、まずOTCは日本と違い、風邪薬一つにしても片手で数える程度しか種類がなく、その中でもほとんどがBoots薬局の自社製品で占められ、値段もかなり安くなっています。さらい、調剤の方でも元々処方箋が一般名処方でくるので、そのうちの約80%近くを自社製品のジェネリックを使って投薬していくため、結果的に定価の50%〜70%が売り上げになるとの事でした。(中国で生産し、パッケージのみBootsになっているため、元々の値段から抑えられているようです。)
観光地である、おの店舗でも週に約800枚の処方箋が扱われ、郊外になると週に約5,000枚に上り、処方箋1枚が約20ポンド(日本円にして約2,600円)、さらに抱き合わせで他の雑貨品などの商品を購入すること、ヨーロッパ圏に展開していることなどを考えるとかなりの売り上げになっていると考えられます。

イギリスの調剤業務は日本と違いかなりアバウトです。
まず、アメリカのように調剤などはテクニシャンが行い、薬剤師は、処方監査や、リピート処方箋の管理、患者さんへのカウンセリングなどを中心に仕事をしています。

処方について

イギリスでの処方は「ナイス」という、国が作っているガイドラインに添って出されます。ナイスは、疾患ごとに使える薬や、用法用量などが細かく決められている本で、併用にも規制が設けられています。イギリスでは、この本から逸脱した処方を出すことはできない医療となっています。良い点としては、無駄な処方などが避けられ医療費抑制につながることや、標準化されていることで安心して仕事ができるという面があげられます。問題点としては実際、疾患ごとに使用できる薬の種類は少ないため選択の幅が狭いこと、高く新しい薬は承認されにくいという事があげられます。実際には他国で承認されているガン治療が高額という理由で使用できず延命できないという問題がおき、デモが起きたという事件もあったようです。個人的には、ほぼ全額無料の医療体制の中では、医療費を抑制するという点で大切なことと思いますし、薬剤師としても楽なのだろうなとは思いますが、病気は同じ病気でも個人差の大きいもので、患者さんの為の医療とは必ずしも言えないのではないのかなと思いました。現在の首相は自由診療を目指しているとのことでしたが、今までのほぼ全額国が負担する医療体系や、保守的な考え方の多い国民性などを考えるとなかなか難しいのではないかと思います。

処方箋

イギリスではアメリカに近いリピート処方箋というものが使われています。
処方箋には2種類あり、Drがチェックして短い期間(30日分など)をだす場合と6枚綴りなどを一気に出す場合があるそうですが、後者はほとんど出ないそうです。
処方箋自体の期限は6ヶ月間ですが、アメリカのように一枚の処方箋を何度も使い回ししません。

処方箋を受け取った患者さんは好きなコミュニティー薬局に向かいそこで契約を行います。そして契約を行った薬局では、その患者さんの処方箋に基いてお薬が切れそうな時期に薬剤師が病院へ次の処方箋を取りに行き、調剤し患者さん宅へ持っていきます。(ただし、イギリスは薬物中毒者の問題も多い為、麻薬や向精神薬、抗不安薬などは対象外となっています。)
そんな話を聞くとコンプライアンスの問題などが真っ先に考えられますがイギリスは個人情報保護と自己責任という概念が日本よりも強く、何故そんな事まで他人に情報を知られなくてはならないのかという概念と、あくまで自己責任で管理すべきものだという考え方が一般的なので、問題にならないそうです。
ただ、ずっと放置するわけでもなく6ヶ月に1度薬局側から患者さんへ通知を出し、薬剤師とカウンセリングを受けるように推奨し、そこでコンプライアンスの管理もすることになっています。しかし、患者さんが拒否されても自己責任の範囲ということで処理されるため、強制力はあまりないようです。リピートできる期間は1年間で、その後1年を過ぎたら患者さん自身が新しい処方箋もらいにDrのところに受診することになっているそうです。もちろん1年の間に体調変化があった場合などはアメリカと同じように薬剤師に相談し、病院を勧められることもあります。そのため、血液検査なども薬剤師が行うこともできるようです。

調剤

ジェネリックを多く使う為単価が安いのもあり、例えば28錠処方の場合、箱が30包装であれば小分けをせず箱ごとお渡しをします。(さすがに単価の高い薬は小分けをするそうです。)国民性、そして字の読み書きが出来ない方が沢山いること、薬について知識のない方も多いことなどから、パッケージが変わっても気にする方はほとんどいないため、クレームがでるということは滅多にないそうです。箱は開けずにお渡しするため、箱の中には、はじめから患者さん向けの説明書が入っており(日本より詳しいそうです)、ジップロックのようなものに箱ごと入れてそのまま患者さんにお渡しします。薬剤師の使う添付文書は、ネットで検索するそうです。
また、イギリスには小児用の粉薬というものが存在せず、シロップのみです。シロップの混合も危険な物とされ、基本的に行われないので(行う場合は施設と免許が必要になるそうです。)時間も、経費もかからないようです。

一包化

日本のように一包化マシンのようなものはなく、写真にあるようなものに一つ一つ手で入れていって上からシートを貼りお渡しします。日本の様に十何種類の一包化というのは存在しないため可能なようです。

カレンダー用に最初からなっているため、とても使いやすい印象をうけました。
ちなみに、病院では一包化をするということはなく、薬局独自のシステムだそうです。幅はありますが、だいたい国の負担で7〜8ポンド(日本円にして約1,000円前後)くらい加算をとることが出来るそうです。

その他のサービス

薬局内には認定薬剤師によるMURなどを行うコンサルティングルームがあります。そこではMURだけではなく、脱毛に関する相談や、肥満の方、禁煙訓練のサービスなども行われます。
また、Boots薬局では、エンハンスドサービスの一つとして、薬剤師による目・耳・歯の検診を無料で行なっています。これはイギリスで一年に一回国民は検診を受けることが奨励されていることに基づくもので、検診後眼鏡を買ってもらったりすることで売り上げをあげるため、無料で行なっているそうです。

今回の視察において一番理解するのが大変だったことは国民性の違いでした。イギリスはとても保守的な国であり、そして自己責任、個人情報ということをとても大切にしているということを理解しないと日本では到底信じられない話が沢山ありました。国分さんのお話の中に、日本は患者さんにとてもやさしいというお話がありましたが、日本に帰ってきて改めて日々の業務を見たときに、手をかけすぎかもと思うほど親切だと思いました。ただ、それは国民性の違いであり、日本の昔からの風習を考えるといいところも悪いところも両者半々といった印象を受けました。
また、アメリカのようにイギリスではまだ薬剤師の地位は高くないそうで、いろいろなことに手を広げながら模索しているように感じました。また、ドクターの問題、そして標準化され、制限された医療なども考えると予防と早期発見が特に大切であり、おのずと予防医学が進んでいるように見えますが、医療は進んでいるようで進んでいない中途半端さを感じる国だと思いました。しかし日本の医療費の問題を考えると予防医学などは学ぶところは多く、さらに薬剤師として業務の幅の狭さも実感する場面もあり、日々忙しさに追われて過ごすだけではなく患者さんの為に普段の業務を超えて何ができるかを考えていきたいと思いました。